大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

横浜地方裁判所 昭和56年(タ)100号 判決

原告

X

右訴訟代理人

御宿義

被告

Y

右訴訟代理人

小谷薫

主文

1  原告と被告とを離婚する。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

事実及び争点

第一 請求の趣旨

主文同旨の判決を求める。

第二 請求の原因

一 原告は、昭和二三年五月一七日に被告と婚姻の届出をし、現在までに二子を得たが、長女Aは結婚して別居しており、同居の長男Bも成人している。

二 原告は、大正一一年一二月二六日生、被告は、昭和三年一二月五日生である。

三 原告は、昭和二一年に専修大学経済学部を卒業して日本○○○○○株式会社に入社、人事部長代理、総務部長、同和対策室長等を歴任して、昭和五五年三月退職し、現在は、義兄の経営する○○○○製菓株式会社の顧問をしている。

四 被告は以前から自己中心的で金銭欲が強く、昭和四〇年ごろからそれが病的になり、長期にわたり悪質な財産隠匿を続けていたことが判明した。隠匿財産は、主要なものだけで土地権利証三通の他三三、六二一、二〇〇円に達する。

五 被告の原告に対する侮辱的言動は、長女が出生した昭和二四年ごろから始まり、昭和四〇年ごろから激化し、連日のように続いた。例えば、被告は、長男とともに二階に寝起きし、原告とは別居同然で、ふだんは口も利かない生活を続けながら、突然二階から降りて来て「いじめられた。」とか「結婚して損をした。」とか「原告が実母とべつたりだ。」とか具体性のない非難を並べ、突然、自分の言葉に興奮して原告に対し「威張るな。」「ばか、何を言いやがる。」などの暴言を吐いた。原告が小遣い(約三万円程度)の増額を相談しようとすると矢張り興奮して、同様の暴言を吐く始末である。

六 被告は、昭和五一年ごろから原告と食事、寝室を別にし、そのため、原告は家庭内で孤立し、子供たちと話をしたことがない程に疎外された。

七 被告は、原告の母C(既に八〇才を越えている。)をきらい、同居を拒むので、Cは屋敷内の車庫の上に六畳一間を作つて独り暮らしをしている。老母を案じて原告が立寄ると被告は「二人で何を相談した。何を悪口言つた。」と怒り、車庫内から登る階段しかない六畳間に、Cが万一の場合の避難口を別につくつてくれと懇願しても、難色を示して作らせない。また、日常の買物も独りでしているCが、急な坂道を荷物を持つて歩いているのに出会つても、被告は自家用車に乗りながら、乗せようともしない。更に、原被告間の不仲を心配したCが昭和五五年一〇月ごろに被告と話合おうとしたときにも、長女と二人でCを罵倒し「ばばあ、早く死んでしまえ。」とどなりつける有様であつた。

八 原告は昭和五五年一〇月一六日に横浜家庭裁判所に婚姻関係調整の申立をしたが、翌五六年四月一〇日に不調となつた。

九 よつて、原告は、民法第七七〇条第一項第五号の規定により、被告との離婚を求めるため本訴請求に及んだ。

第三 請求の趣旨及び原因に対する答弁

一 本案前の申立

本件を横浜家庭裁判所の調停に付するとの裁判を求める。

二 右申立の理由

本件については、先に横浜家庭裁判所に調停の申立がなされ、昭和五六年四月一〇日に不調となつたが、右調停の内容は、財産隠匿問題に終始し、離婚問題は一度も持出されることがなかつたから、本件離婚について実質的な調停がなされているとは言えない。

三 請求の趣旨に対する答弁

請求棄却の判決を求める。

四 請求原因事実に対する認否

1 請求原因事実一から三までは認める。

2 同四は否認する。

3 同五のうち、被告が長男とともに二階に寝起きしていることは認めるが、その余の事実は否認する。

4 同六は否認する。

5 同七のうち、Cが屋敷内の車庫の二階に居住していること、右二階に通ずる階段は車庫内にあることはいずれも認めるが、その余の事実は否認する。なお、被告は運転免許を有していない。

6 同八の事実は認める。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例